海外で病気・けがをしたときの動き方 ——医療費・保険・キャッシュレス受診の実務
TRAVEL · 情報基準日 2026-04-16 · 約4,000字
本記事は執筆時点(2026年6月)の一般的な情報整理です。犯罪・医療・保険・法規制に関する個別の判断は、外務省海外安全ホームページ、各国大使館・領事館、加入中の保険会社、現地警察、医療機関、専門家に必ずご相談ください。
海外で体調を崩した・けがをしたとき、最初の数時間の動き方が、医療費・治療の質・帰国までのストレスを大きく左右します。本記事では、加入中の海外旅行保険の使い方を軸に、現地での受診の進め方を整理します。
全体像
海外医療は、概ね次の流れになります。
- 救急性の判断
- 保険会社の24時間窓口へ連絡
- キャッシュレス病院の案内を受ける
- 受診・診断・治療
- 書類の保管
- 帰国後の補完手続き
「保険会社の24時間窓口にまず電話」がほとんどのケースで正解です。
ステップ1: 救急性の判断
意識障害・呼吸困難・大出血・激しい胸痛などの緊急サインがある場合は、救急番号を優先します。
| 国 | 救急 |
|---|---|
| 米国 | 911 |
| EU加盟国 | 112 |
| 英国 | 999 |
| タイ | 1669 |
| ベトナム | 115 |
| インドネシア | 119 |
| 韓国 | 119 |
| 台湾 | 119 |
緊急性が低い場合は、ホテルフロント→保険会社の24時間窓口、の順で動きます。
ステップ2: 保険会社の24時間窓口
加入中の海外旅行保険には、ほぼ全てに24時間日本語サポートデスクが付いています。電話番号は保険証券に記載されています。渡航前にスマホ・紙の両方で控えておくと安心です。
伝えること
- 証券番号(または契約者氏名)
- 現在地(滞在ホテル・都市)
- 症状の概要
- 既往症・常用薬
- 連絡可能な電話番号
ステップ3: キャッシュレス受診の案内
多くの海外旅行保険には「キャッシュレス受診」サービスがあります。これは、保険会社が指定する提携病院で受診した場合、医療費を窓口で立て替えずに保険会社が直接病院に支払う仕組みです。
キャッシュレス受診のメリット
- 高額な医療費を自己負担しなくて済む
- 通訳サポートが提供される場合がある
- 提携病院は日本人対応に慣れている場合が多い
キャッシュレスが使えない場合
- 提携病院が近くにない
- 夜間・休日で提携病院が閉まっている
- 救急車で運ばれた病院が提携外
この場合は一旦自己負担で支払い、帰国後に保険金請求(後述)します。
ステップ4: 受診の進め方
病院に着いたら
- 受付で「I have travel insurance.」「Cashless service.」と伝える
- 保険証券のコピーを見せる
- 症状を伝える(翻訳アプリ・紙メモ・絵)
- 診察・検査・治療を受ける
- 領収書・診断書・処方箋を全て受け取る
症状を伝える紙メモのテンプレ
渡航前に、次のテンプレを英訳して持参すると便利です。
- 名前・年齢・国籍・血液型
- 既往症(高血圧・糖尿病など)
- 常用薬(薬剤名+量)
- アレルギー(食物・薬)
- 現在の症状(発症時期・性状・経過)
言葉が通じない場面
- 保険会社の通訳サポートを電話で同席依頼
- 翻訳アプリ(オフライン辞書DL推奨)
- 紙メモのテンプレ
- ホテルのコンシェルジュに同行依頼(高級ホテル中心)
- 大使館の情報提供: 在外公館は医師リスト・病院情報を提供する場合がある
国別の医療費の傾向
医療費は国によって大きな差があります。具体的な金額は変動するため、傾向の理解として参考にとどめてください。
| 地域 | 医療費の傾向 |
|---|---|
| 米国 | 世界的に最高水準。盲腸手術で数百万円規模も報告される |
| 西欧 | 米国より低い傾向だが、英国・スイス等では高額化 |
| 東南アジア(都市部) | 私立病院は中〜高、公立は低 |
| 東南アジア(地方) | 公的施設は安価だが、設備は限定的 |
| 中国・韓国・台湾 | 都市部の私立は中程度 |
| 中南米 | 国・施設で差が大きい |
「米国・カナダ・西欧」の渡航では、医療費補償が手厚い保険を選ぶ意義が大きくなります。
キャッシュレス受診が使えなかった場合
- 領収書・診断書を全て保管
- 帰国後、保険会社所定の書式で請求
- 通常、提出書類は領収書・診断書・診療明細・パスポートコピーなど
詳しくは「海外旅行保険の請求実務」記事をご覧ください。
処方薬と帰国
海外で処方された薬は、種類によっては日本国内への持ち込みが制限される場合があります。麻薬・向精神薬・覚せい剤原料に該当する成分が含まれる場合、事前手続き(「薬監証明」など)が必要となるケースがあります。厚生労働省の案内を参照してください。
入院・長期化したとき
- 滞在延長の宿泊費・帰国便変更費用が補償対象かを保険会社に確認
- 家族の駆けつけ費用が補償対象の保険もある(「救援者費用」)
- 仕事・学校への連絡は在外公館の領事サービスでサポート相談可能
帰国便への配慮
- 帰国前に医師から「Fit to fly(搭乗可能)」の所見をもらう
- 一部疾患では航空会社に事前連絡が必要
- 機内での投薬・酸素は事前手配
持病・常用薬の準備
- 常用薬は英文の薬剤名・成分名で控える
- 1週間分の予備を別かばんに(紛失時のリスク分散)
- 英文診断書(主治医に依頼)を持参
- 渡航先で同じ薬が入手可能かを事前確認
まとめ
海外医療の動き方は、「救急性の判断→保険会社の24時間窓口→キャッシュレス受診」が基本ルートです。書類を全て保管しておくことで、キャッシュレスが使えなくても帰国後に請求できます。準備すれば、リスクは下げられる。万が一体調を崩しても、対処の手順があります。
本記事は2026年6月時点の一般的な情報整理です。具体的な医療判断は、医療機関、加入中の保険会社、在外公館に必ずご相談ください。
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