旅行代が高すぎる時代に、現金だけで大丈夫? — ポルト部長の経済ニュース翻訳室 #1
INVEST · 情報基準日 2026-06-03 · 約3,000字 · 約6分
マイル:「ちょっと聞いてよ。夏の航空券、調べたらとんでもない値段になっててさ。去年より全然高い気がするんだけど。」
ポルト:「うむ。それはニュースの話と繋がっておる。少し翻訳してみようかのう。」
マイル:「翻訳? 経済ニュースってむずかしいやつでしょ。わかるの、俺?」
ポルト:「お主が気にしているのは、結局『今年あと何回旅行に行けるか』じゃろ。ならわかる。それが翻訳というものじゃ。」
「旅行代が高い」の正体
航空券を検索して、画面を二度見する。ホテル代を見て、いったん閉じる。最近の旅行計画は、まずここから始まる人も多いと思います。
ただ「高い」の中身を少し分解してみると、いくつかの要素が重なっていることがわかります。
円安の影響: 海外旅行の場合、航空券・ホテル・食事・観光費のほぼすべてが現地通貨建てです。円の価値が下がると、同じ旅行でも円ベースの支出は増えます。具体的な数字は日々変動しますが、「1ドル=120円」と「1ドル=150円」では、1,000ドルの旅費が12万円と15万円に変わります。30%近い差です。
物価上昇の影響: 国内旅行でも、ホテル代・食費・交通費は上昇傾向が続いています。特にホテルは需要増・人件費上昇・光熱費上昇が重なりやすく、数年前の感覚で予算を組むと不足するケースがあります。
燃油サーチャージの影響: 国際線では、航空会社が燃料費の変動を乗客に転嫁する「燃油サーチャージ」が加算されます。原油価格が上がると、サーチャージも上がりやすい仕組みです。マイルで特典航空券を取る場合も、サーチャージは別途かかることが多いため注意が必要です。
マイル:「つまり、円安・物価高・燃油サーチャージが全部重なると、旅行代は三重にきついってこと?」
ポルト:「その通りじゃ。そしてこの三つの根っこには、共通する一つの問題がある。」
マイル:「なに?」
ポルト:「現金そのものは額面では減らん。だが、同じ現金で買える旅の量が、少しずつ減っていく——ということじゃ。」
「購買力」という視点
ここで一つ、キーワードを押さえておきたいと思います。
購買力(purchasing power)。これは「同じ金額で、どれだけのものを買えるか」を表す概念です。
たとえば、100万円の現金を持っていたとします。
- 1ドル=120円の時代には、8,333ドルぶんの旅行ができます。
- 1ドル=150円になると、同じ100万円でも6,667ドルぶんにしかなりません。
円の購買力は下がった——つまり、現金は額面では減っていなくても、同じ金額で買える旅行の量は少しずつ減っている、ということです。
旅行の話に翻訳すると——お金の価値が下がるということは、未来の旅の選択肢が減るということ。
現金のまま持ち続けるということは、インフレや円安が進むほど、実質的に旅行の回数が減っていくことを意味します。
ポルト:「現金は安全に見えて、インフレの前では少しずつ目減りしていく。これは責めているのではなく、仕組みとして知っておく話じゃ。」
マイル:「現金=安全って思ってたけど、実は旅行の選択肢が削られてたってこと?」
ポルト:「そう考えると、少し見え方が変わるじゃろ。」
「現金だけ」のリスクと向き合う
インフレ・円安が進む局面では、現金の実質価値は時間とともに下がりやすいと言われます。
ただし、これは「現金を全部投資に回せ」という話ではありません。
現金には、投資にはない重要な役割があります。
生活防衛資金: 急な出費・失業・医療費など、予測できない支出に対応するための現金は必要です。一般的には生活費の数か月分を目安にする考え方がありますが、個人の状況によって適切な額は変わります。
短期の旅行資金: 「来年ハワイに行く」ために積み立てているお金は、投資リスクにさらすより現金で持つ方が合理的な場合があります。
長期の資金: 10年・20年と使う予定のないお金は、現金のまま置いておくと、インフレで購買力が少しずつ削られやすい部分です。
お金は「いつ使うか」で置き場所を分けて考えると、整理しやすくなります。
| お金の置き場所 | 向いている用途 |
|---|---|
| 現金 | 生活防衛資金、1年以内の旅行資金、急な出費 |
| 預金・短期資金 | 1〜3年以内に使う予定のあるお金 |
| 新NISA・投資信託 | 10年以上使わない長期資金 |
| 高配当株・配当ETF | 将来の旅行費を配当で補いたい人向け |
現金を全部動かす必要はありません。問題は長期資金まで「現金だけ」で持ち続けることです。特に10年・20年という単位で考えると、インフレによる購買力の目減りは無視できないとされています。
新NISA・配当という選択肢が登場する理由
ここからは、上の表でいう「10年以上使わない長期資金」の話です。その一部を、購買力の低下に備えて株式・投資信託などに分散する、という選択肢があります(生活防衛資金や近い予定の旅行資金は、現金のままで構いません)。
代表的な仕組みとして、日本では新NISAがあります。
新NISAを使って、たとえばオルカン(全世界株式インデックスファンド)や高配当ETFを積み立てると、どうなるか——これは「必ず儲かる」という話ではありません。株式は価格が下がることもあり、元本保証はありません。
ただ、長期的に分散投資を続けることで、現金の購買力低下に対抗しやすくなる可能性があると言われています。これは「保証」ではなく「可能性の話」です。
さらに高配当株や配当ETFを組み合わせると、配当収入という現金フローが発生します。配当が入れば、その分を旅行に使うことができます。
旅行代が高くなっても、配当で補える設計ができていれば、旅の選択肢を守りやすくなります。
マイル:「インフレで旅行代が上がるなら、配当でその分を補う仕組みを作っておけばいいってこと?」
ポルト:「そういう考え方もある、ということじゃ。保証はできんが、設計として参考にはなる。」
マイル:「経済ニュースって難しいと思ってたけど、『今年あと何回旅行に行けるか』で考えると急にリアルになるな。」
ポルト:「それが翻訳というものじゃよ。難しい話を難しいまま覚える必要はない。自分の旅と資産に結びつけて考えれば十分じゃ。」
まとめ: ポルト部長の翻訳
今回の翻訳を整理すると、このようになります。
ニュースの言葉 → ポルト翻訳
- 「円安が進んでいる」→ 海外旅行のコストが同じ円でも増えている
- 「物価が上がっている」→ 国内旅行も以前の予算では足りなくなっている
- 「燃油サーチャージが高止まり」→ マイル旅行でもキャッシュコストが想定より重くなりやすい
- 「購買力が下がっている」→ お金の価値が下がるということは、未来の旅の選択肢が減るということ
- 「インフレへの備え」→ 現金だけでなく、資産の一部を株式・投資信託に分散する選択肢がある
執事H:「整理いたしますと、経済ニュースは遠い話ではなく、『現金の実力が今どのくらいか』『来年・10年後の旅費をどう準備するか』という自分ごとの問題です。一度に全部解決する必要はありませんが、知っておくと設計の精度が上がります。」
ポルト部長の経済ニュース翻訳室 は、難しい経済の言葉を「自分の旅と資産にどう関係するか」に翻訳する連載です。月1〜2本のペースで続けていく予定です。
※本記事は特定の金融商品や投資手法を推奨するものではありません。資産形成の判断はご自身の状況に合わせて行ってください。情報基準日は2026年6月3日です。
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参照(情報基準日 2026-06-03)
- 本記事は一般的な考え方の整理です。数値・条件・制度は改定されることがあります
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