退職後、お金を使う力をどう作るか ——「貯める力」と「使う力」は別物
LIFE · 情報基準日 2026-06-07 · 約3,700字
「退職した。資産はある。でも、何にどう使えばいいか分からない」——70代以降の家計調査ではよく見られる現象です。本記事では資産形成期と退職後の「お金との関わり方」の違いと、使う力を育てるトレーニングを整理します。
なぜ「使う力」が衰えるのか
30〜50代の現役期は「貯める・増やす」が主目的。給与収入があり、支出を抑え、運用に回す。この習慣を30年続けた人は、節約と運用が自動化された脳を持っています。
退職後はこれが逆になります。新規収入は年金のみ。資産を取り崩しながら生活する局面に変わります。しかし、30年間鍛えた「節約脳」は簡単には切り替わりません。
結果として:
- 旅行に行きたいが、お金がもったいない気がする
- 美味しいものを食べたいが、贅沢な気がする
- 趣味にお金を使いたいが、無駄遣いの罪悪感がある
- 子どもや孫に渡したいが、自分が困らないか不安
この心理は「使い渋り」と呼ばれ、特に日本の高齢者世帯で目立つ傾向があるとされます。
データで見る「使わない問題」
| 指標 | 数値・傾向 | 出典の傾向 |
|---|---|---|
| 70代以上世帯の金融資産中央値 | 約1,500万円 | 家計の金融行動に関する世論調査(知るぽると) |
| 70代以上世帯の純金融資産平均 | 2,000万円超 | 同上 |
| 75歳以上の年間消費支出 | 単身約140万円 | 家計調査年報・総務省統計局 |
| 「お金を使うのが怖い」と答えた70代以上の比率 | 約4割 | 民間意識調査の傾向 |
つまり「お金はあるが使わない人」がボリュームゾーンとして存在しているのが日本の現実です。
使う力を育てる5つのトレーニング
トレーニング1: 「使うための予算」を意識的に作る
家計の中に「楽しむための支出枠」を明示する。例: 月3万円の「楽しみ予算」を設定。残ったら来月に持ち越し可能、ただし投資には回さない。
トレーニング2: 月1回の「使うイベント」を予約
カレンダーに「今月は寿司を食べに行く」「今月は美術館へ」「今月は孫に何か」を入れる。支出は予定として組み込まないと習慣化しない。
トレーニング3: 旅行を年2回に固定
「マイルが貯まったら」「体力があれば」では行動できない。年2回の旅行を固定スケジュールにする。マイル運用と相性が良い。
トレーニング4: 「使い方」を学ぶ
何にお金を使えばいいか分からない場合、本・YouTube・知人から「使い方の参考」を取る。
- 趣味本(写真・カメラ・楽器・釣り・ガーデニング・料理)
- 美術館・コンサート定期券
- 大人の学び直し(大学公開講座・地域カルチャー)
- 健康投資(ジム・整体・人間ドック)
「使い方のレシピ」がないと、お金は通帳で寝続けます。
トレーニング5: 「死蔵」を見える化
「年間500万円使える資産があるのに、年200万円しか使っていない」というケースを数字で可視化。残った300万円は実質的に「相続用に保留」されているという現実を見る。
「使う」ことの心理的障壁
障壁1: 残りの寿命が分からない
「あと20年生きるかもしれない」と思うと使えない。「あと5年で終わるかもしれない」なら使える。日本人の80歳時点の平均余命は男性約9年・女性約12年(参考値)。
障壁2: 介護費用の不安
「将来介護で500万円必要」と思うと使えない。介護施設費用の試算・公的支援の活用範囲を知ることで、必要備蓄額が見える。
障壁3: 「贅沢=悪」という価値観
戦中・戦後生まれの世代に共通する価値観。これを理解した上で、自分なりに「使う意味」を再定義する必要がある。
障壁4: 配偶者・子どもとの調整
「自分だけ使うのは…」と遠慮する場合、家族全体で「使うこと」を合意することが必要。家族会議で「今後のお金の使い方」を話し合う。
ケース別の「使い方プラン」
ケースA: 健康な70代夫婦
- 年2回の国内・海外旅行(マイル活用)
- 月1回の外食(夫婦の記念日固定)
- 季節ごとの服・小物(楽しむための買い物)
- 文化活動(美術館・コンサート年4-6回)
ケースB: 健康に不安がある70代
- 健康投資(ジム・整体・サプリ・人間ドック)を優先
- 旅行は無理せず国内中心
- 自宅環境改善(段差解消・室温管理)
ケースC: 単身高齢者
- 「孤独を埋める」支出を意識的に
- コミュニティ参加(地域カルチャー・趣味サークル)
- 月1〜2回の外食・カフェ
- ペット・園芸など「日常の楽しみ」
マイル運用との連携
退職後の旅行は、マイル運用の「出口」です。
- 貯めたマイル(ANA/JAL)をビジネスクラスで使う
- 体力に合わせた旅程設計
- 上級会員ステータスでラウンジ・優先搭乗を活用
- 国内特典航空券で頻度を上げる
「マイルがあるから旅に行く」のではなく「年2回の旅をマイルで快適にする」と発想を変えるのが重要。
まとめ
退職後の「お金を使う力」は、現役期の「貯める力」とは別の筋肉です。意識的にトレーニングしないと衰えていきます。月1回の使うイベント・年2回の旅行・楽しみ予算・使い方の学び。これらを習慣化することで、資産を生かす力が育ちます。マイル運用と組み合わせれば、出口の効率も最大化できます。
本記事は一般的な情報整理です。金額や生活設計は個人差があるため、具体的なプランニングはFP等にご相談ください。情報基準日 2026-06-07。
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