株式・投資信託の相続と贈与 ——生前贈与・相続評価額・名義変更の基本
本記事には広告・アフィリエイトリンクを含む場合があります。特定の金融商品・カード・証券会社・サービス・商品の申込や購入を推奨するものではありません。掲載の条件・数値は変動するため、必ず公式情報でご確認ください。
INVEST · 情報基準日 2026-05-31 · 約3,400字 · 約7分
マイル:「株や投資信託って、亡くなったらどうなるの?そのまま相続人のもの?」
執事H:「『そのまま』とはまいりません。**いくらと評価するか(評価額)・誰の口座に移すか(名義変更)・どの税がかかるか(相続税/贈与税)**の3点を、それぞれ手続きする必要がございます。」
ポルト:「現預金と違い、株・投信は『評価額が変動する財産』。評価のルールと、取得費の引継ぎを知らないと、相続人が将来の税で損をすることがある。」
株・投信の相続は「評価・名義変更・税」の3つで考える
株式や投資信託を相続・贈与するときに整理すべきは、大きく3点です。
- 評価額 ——相続税・贈与税の計算に使う「いくらの財産か」
- 名義変更(移管) ——被相続人の口座から相続人の口座へ移す実務
- 税金 ——相続税・贈与税、そして将来売却したときの譲渡所得税
順に整理します。なお本記事の制度・数値は2026年5月時点の一般的な目安です。相続税・贈与税は改正が多い分野ですので、実際の手続きは国税庁の公式情報を確認し、税理士・税務署にご相談ください。
1. 評価額 ——上場株式と投資信託で算定が違う
相続税・贈与税の計算では、財産を一定のルールで評価します。
| 財産 | 評価方法(原則) |
|---|---|
| 上場株式 | ①相続開始日(課税時期)の終値、②その月の終値の月平均、③前月の終値の月平均、④前々月の終値の月平均 の4つのうち最も低い価額 |
| 投資信託(一般の証券投資信託) | 相続開始日に解約・買取請求した場合の価額相当(基準価額をもとに、信託財産留保額や源泉徴収税相当を控除した額) |
上場株式は、価格変動の影響を緩和するため「当日と直近3か月の月平均のうち最低額」を選べるのが特徴です。投資信託は基準価額そのままではなく、解約時に手元に入る金額ベースで評価する点に注意します。
執事H:「同じ銘柄でも、いつの・どの基準で評価するかで税額が変わります。評価は財産評価基本通達に沿って行うため、判断に迷う場合は税理士にご確認くださいませ。」
2. 取得費の引継ぎ ——将来の売却で効いてくる論点
見落とされがちですが、相続・贈与で取得した株式・投信は、被相続人(贈与者)の取得費と取得時期を引き継ぎます。
つまり、相続人がその株を将来売却したときの譲渡所得は、「売却額 −(相続評価額ではなく)故人が買ったときの取得費」で計算されます。値上がりした銘柄を相続した場合、相続時の評価額が高くても、将来売れば「故人の購入時からの値上がり益」に譲渡所得税がかかる、という構造です。
- 取得費が不明な場合は、売却額の**5%**を概算取得費として使える特例があります。
- 相続税を払った人が一定期間内に売却する場合、取得費加算の特例(支払った相続税の一部を取得費に加算できる)を使える可能性があります。
マイル:「相続したときの値段で計算されるんじゃないんだ……」
ポルト:「そこが現預金との大きな違いじゃ。だから、どの銘柄を誰が相続するかは、将来の売却まで見越して考える余地がある。」
3. 名義変更(移管) ——証券口座をまたぐ実務
株式・投信は、被相続人の証券口座から相続人名義の口座へ**移管(振替)**します。主な流れと注意点です。
- 相続人がその証券会社に口座を持っていなければ、新規口座の開設が必要(原則、同じ証券会社内での移管)。
- 遺産分割協議書・戸籍等の必要書類をそろえ、証券会社所定の相続手続きを行う。
- NISA口座の資産は、相続人のNISAには引き継げません。被相続人の死亡日の時価で相続人の課税口座(特定口座・一般口座)へ移されます。
- 相続した株式は、要件を満たせば相続人の特定口座で受け入れることもできます(取得費は前述のとおり引き継ぎ)。
手続きには時間がかかることがあり、相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。早めに証券会社へ連絡するのが安全です。
相続税と贈与税の基礎 ——どこから課税されるか
| 税 | 基礎控除など(2026年5月時点の目安) |
|---|---|
| 相続税 | 基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数。配偶者は「1億6,000万円または法定相続分まで」非課税となる税額軽減あり |
| 贈与税(暦年課税) | 年間110万円の基礎控除。超える部分に累進課税 |
| 相続時精算課税 | 累計2,500万円まで特別控除。2024年から年110万円の基礎控除が別途新設 |
基礎控除の範囲なら相続税はかからないこともありますが、株式・投信の評価額しだいで超えることもあります。まず自分のケースが「課税されるのか」を把握するのが出発点です。
2024年以降の改正 ——生前贈与加算が「3年→7年」へ
近年の改正で、生前贈与の扱いが変わっています。
- 生前贈与加算の期間延長:相続開始前の暦年贈与を相続財産に加算する期間が、従来の「3年」から段階的に「7年」へ延長されました(2024年1月1日以降の贈与から順次適用)。延長された期間分のうち総額100万円までは加算対象外という緩和もあります。
- 相続時精算課税の見直し:2024年から年110万円の基礎控除が新設され、この基礎控除分は相続財産に加算されません。
つまり「亡くなる直前の駆け込み贈与」は加算されやすくなった一方、精算課税の年110万円枠が使いやすくなった、という方向の変更です。どちらの制度が有利かは資産規模・年齢・家族構成で異なり、判断は税理士への相談が前提になります。
執事H:「制度が変わった直後は、古い情報のまま判断すると誤りが起きやすうございます。生前贈与を検討される際は、必ず最新の国税庁情報と税理士の確認を。」
チェックリスト
- 相続財産に株式・投資信託が含まれるか、銘柄・口座を把握したか
- 評価方法(上場株式=4基準の最低額/投信=解約価額相当)を理解したか
- 取得費が引き継がれる点と、将来売却時の譲渡所得を考慮したか
- NISA資産は相続人のNISAに引き継げないことを確認したか
- 相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えそうか試算したか
- 生前贈与を考える場合、2024年以降の加算期間延長を踏まえたか
- 申告期限(10か月)を意識し、税理士・証券会社に早めに相談したか
まとめ
- 株・投信の相続は評価・名義変更・税の3点で整理する
- 上場株式は4基準の最低額、投信は解約価額相当で評価
- 取得費は被相続人から引き継ぐ。将来の売却益課税まで見越して考える
- NISA資産は相続人のNISAに引き継げない。課税口座へ移される
- 2024年以降、生前贈与の加算期間が3年→7年へ延長。制度変更が多いため最新確認が必須
- 評価・申告は専門的。税理士・税務署・証券会社への確認を前提に
ポルト:「相続は『誰が何を引き継ぐか』だけでなく『引き継いだ後に売ったらどうなるか』まで含めて設計するもの。株・投信はその視点が特に効く財産じゃ。」
マイル:「早めに税理士さんに相談、だね!」
参照(情報基準日 2026-05-31)
- 国税庁「財産評価」(上場株式・投資信託の評価)
- 国税庁「相続税」「贈与税」「相続時精算課税の選択」
- 国税庁 令和5年度税制改正(生前贈与加算・相続時精算課税の見直し)
- 各証券会社の相続手続きの案内
※本記事の情報は記事冒頭に記載の情報基準日時点のものです。相続税・贈与税・評価の制度・条件は改定される場合があります。実際の評価・申告・手続きの前に、国税庁の公式情報をご確認のうえ、個別の判断は税理士・税務署・各証券会社にご相談ください。本記事は投資勧誘・特定商品の購入推奨ではありません。
関連記事
- INVEST自分が使う経済圏の「株」を持つ意味 —— 三井住友FG・楽天グループで、配当・株主優待とポイント還元を横並びで考える【2026年6月版】毎月使う三井住友(Olive・Vポイント)や楽天(楽天カード・楽天モバイル)の親会社の株を、利用者として持つとどうなるか。配当・株主優待・ポイント還元を『利用者リターン』と『株主リターン』の二層で横並…
- INVEST資産は「1画面」にまとめてから増やす ——マネーフォワードMEで純資産を見える化する設計・注意点【2026年6月版】家計の単位は口座残高でなく純資産(資産−負債)。連携型で記録を自動化し、月1回グラフを見る習慣が固定費・投資・整理の次の一手につながる。連携は参照系(見る鍵)+二段階認証。情報基準日 2026-06-…
- INVESTiDeCoの商品はどう選ぶか ——元本確保型と投資信託の違い、出口課税まで含めた考え方【2026年6月版】iDeCoの運用商品を、元本確保型(定期預金・保険)と投資信託(インデックス/ターゲットデート)に分けて整理。低コストインデックスが基本とされる理由、60歳まで引き出せない・受取時に課税される出口の論…
あわせて読みたい
関連記事
- INVEST自分が使う経済圏の「株」を持つ意味 —— 三井住友FG・楽天グループで、配当・株主優待とポイント還元を横並びで考える【2026年6月版】毎月使う三井住友(Olive・Vポイント)や楽天(楽天カード・楽天モバイル)の親会社の株を、利用者として持つとどうなるか。配当・株主優待・ポイント還元を『利用者リターン』と『株主リターン』の二層で横並…
- INVEST資産は「1画面」にまとめてから増やす ——マネーフォワードMEで純資産を見える化する設計・注意点【2026年6月版】家計の単位は口座残高でなく純資産(資産−負債)。連携型で記録を自動化し、月1回グラフを見る習慣が固定費・投資・整理の次の一手につながる。連携は参照系(見る鍵)+二段階認証。情報基準日 2026-06-…
- INVESTiDeCoの商品はどう選ぶか ——元本確保型と投資信託の違い、出口課税まで含めた考え方【2026年6月版】iDeCoの運用商品を、元本確保型(定期預金・保険)と投資信託(インデックス/ターゲットデート)に分けて整理。低コストインデックスが基本とされる理由、60歳まで引き出せない・受取時に課税される出口の論…
あわせて読みたい
この記事をシェア
この記事をもっと深めたい人へ — 本と映像のすすめ
記事の整理だけでは足りない人向けに、関連する書籍と映像作品を置いておきます。
- マネー・ショート 華麗なる大逆転 (2015)
リーマンショックを予見した投資家たちの実話。市場のリスクを物語で体感できる。 - マネーボール (2011)
ブラッド・ピット主演。データと合理性で常識を覆す実話。投資的思考の参考に。 - ウォール街 (1987)
オリバー・ストーン監督。強欲と投資哲学を描く古典。お金との距離感を問い直す。
※当サイトはアフィリエイト広告を含みます。ご購入は本サイトの運営継続に充てられます。
